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『対人関係療法でなおす 社交不安障害』を読んでみた

*この記事はアフィリエイト広告を利用しています

こんにちは、きょんです!

今回は最近私が読んだこちらの本をご紹介します。

こちらの本は、精神科医で元国会議員の水島広子医師が書かれた「対人関係療法でなおす」シリーズの第2弾です。

ちなみに、こちらのシリーズは全5冊あります。ご興味のある方はこちらからご覧ください。

目次はこちらです。
ざっくり言うと、前半の1~5章は社交不安障害(SAD)の説明、後半の6~12章は対人関係療法と社交不安障害への適用についてです。

そして強調したいのは、前半の1~5章の社交不安障害(SAD)の説明も、当事者がご家族にとっては心理教育的(自分でその病について知ることができる=治療の第一歩)であり、支援者にとっても社交不安障害について詳しく学べる内容となっていることです。

加えて、子どもの社交不安障害についても少し触れられています。私の臨床経験からも思春期頃からは見られます。
社交不安障害の説明を子ども自身に行う場合には、年齢に応じてかみくだく必要はありますが、子どもにも有効な内容と思われます。

はじめに

第I部 社交不安障害という病気を知る

第1章 社交不安障害とは
 「不安」という感情の存在意義
 不安障害という病気
社交不安障害(社会不安障害)とは
 「全般性」社交不安障害と「限局性(非全般性)」社交不安障害
 どんなふうに発症するか
 社交不安障害がどれほど生活に悪影響を与えるか
 治療をしないとどうなるか
 社交不安障害にともなう他の病気

第2章 社交不安障害の症状の特徴
 回避か、忍耐か
 不安反応
 環境によって位置づけが変わる病気
 社交不安障害と「内気」の境界線
 不安に対する本人の認識
 子どもの社交不安障害

第3章 社交不安障害と対人関係のかかわり
 社交不安障害の人の対人関係
 仲間との関係
 対人関係が社交不安障害に与える影響

第4章 社交不安障害に対する治療法
 薬物療法
 精神療法
   認知行動療法(CBT)
   対人関係療法(IPT)

第5章 自分には治療が効かないと思っている人へ
 過去の治療を振り返ってみる
   治療関係に安心できなかった
   治療者に気を遣いすぎて本当のことが話せなかった

第II部 社交不安障害に対する対人関係療法

第6章 社交不安障害を「病気」として認識する
 社交不安障害は「病気」
 病気として認識することの重要性
 対人関係療法が「病気」を強調する理由
 「病気」と「人格」の混同をやめる

第7章 治療で目指していくこと
 「不安を感じなくなること」が目標ではない
 対人関係療法と不安症状の関連を理解し、対人関係に取り組んでいく
 「治療による役割の変化」を引き受ける
 自分の気持ちを認識して肯定する
 症状に力を与えない

第8章 対人関係療法で焦点を当てていくこと
 対人関係の問題領域
 役割の変化
 社交不安障害によく見られる「役割の変化」の形
 古い役割の喪失を悲しみ受け入れる
 古い役割についてのネガティブな気持ちがあるかどうかを明らかにする
 変化そのものについての気持ちを受け入れる
 サポート源に注目する
 新しい役割に対する不安を扱う
 新しい役割について、ポジティブな面とネガティブな面をよく検討する
 新しい役割が「できる」という感覚を育てるために必要なスキルを身につける
 対人関係上の役割をめぐる不一致
 まず、ずれを明らかにする
 サポート源の重要性
 自分だけのせいではないということを認識する
 境界を設定する
 コミュニケーションと不安の関連に気づく
 身近にいる批判的な人たちとの「不一致」を改善する
 身近にいる過保護な人たちとの「不一致」を改善する

弟9章 「役割不安」を乗り越えるために
 自分を守るために採用してきた方法の本当の効果を探る
 怒りの感情を適切に表現していく
 対立やリスクに向き合うことを考えてみる
 対人関係のポジティブな体験に目を向けていく

第10章 社交不安に対処する上で役に立つ考え方
 まずはハードルの低いところから新たなパターンを試す
 どんな人にも不安があることを忘れない
 予期不安は人に話す
 相手の事情を考えてみるという視点
 治っていく過程での身体症状の扱い

弟11章 「治療を終える」という考え方を、病気への取り組みに生かす
 なぜ治療を「終える」必要があるのか
 治療が終わるときに出てくる気持ち
 進歩を振り返る

第12章 家族にできること
 社交不安障害は治療可能な病気であることを明確に認識する
 本人の感情を肯定する
 新たなパターンは本人のやり方で試してもらう
 親しい関係で攻撃的になる人の場合

 おわりに

 あとがき

対人関係療法とは、この本の著者でもあり日本に対人関係療法を導入した水島医師によると、

対人関係療法は、「重要な他者」との「現在の」関係に焦点を当てて治療するものです。また、単に焦点を当てるのではなく、そこで問題になっていることを四つのテーマのうちの一つに分類し、それぞれの戦略に従って治療をしていく、というふうにある程度マニュアル化されています。治療法がきちんと定義されているので、効果のデータも正確にとることができ、有効性が検証されています。

水島広子こころの健康クリニック 対人関係療法(IPT)とは

とあります。

ということで、私が重要と思った文章を一気にご紹介していきます!

まずは前半の1~6章にある社交不安障害について

・(社交不安障害になると)本来は人とのかかわりの中からえられるはずの満足や喜びが縁遠いものになってしまいますので、常に孤独を感じることになります。
・社交不安障害は、治していこうとしない限りなかなか治らない病気です。本文で述べますが、病気そのものが、放置すると悪循環に陥る構造になっているからです。でも、反対に言えば、治していこうと思えば治せる病気なのです。
・「社交不安障害」は、自らが引き起こしている問題を、患者さんのせいであるかのように見せることが得意です。
・不安の場合は「安全の確保」が一番の存在であると言えます。
・不安障害のときに感じる不安は、「人間として理解できる不安だけれども、程度が強すぎて苦しいもの」であると言えます。
・不安本来の存在意義である「安全の確保」が正常に機能しなくなり、不安が単なる苦しみになってしまうのです。
・不安障害は不安の「質の問題」ではなく「程度の問題」です。
・「自分は病気だと思わない」という感じ方も社交不安障害の特徴だからです。自分は人間としてできそこないなのだ、と感じている人がとても多いのです。
・社交不安障害は「全般性」社交不安障害と「限局性(非全般性)」社交不安障害とに分けられます・。前者は、人とかかわるほとんどの状況を恐怖する状態です。外国の研究からは、社交不安障害で治療を求める人の八~九割が全般性の社交不安障害であることが知られています。
・(限局性社交不安障害は)不安の対象が限定されているという点では、全般性社交不安障害の人に比べると生活の質はまだ保たれていると言えますが、特定の状況に対する恐怖が持続し苦しみをもたらすという点では変わりません。
・人前で恥をかくような体験や、人から厳しく批判される体験など、明確なきっかけをもって突然発症することもありますが、徐々に始まったためにいつからと特定できないようなことも多いです。
・治療をしないと、慢性の経過をとり、自然に回復する率は低いです。
・考え方の整理としては、人とやりとりする状況(人前で話すなど)に際してのみパニック発作が起こるのであれば社交不安障害によるものであると言えます。
・予期しないときにパニック発作が起こるようであれば、それはパニック障害によるものであると言えるでしょう。
・人とのやりとりへの不安が、実際の対人関係場面での不安症状を増やすので、その経験からますます人とのやりとりを不安に思うようになる、という悪循環があります。
・社交不安障害の人は、不安のためにうまく振る舞えない自分のことを責めていますが、そうやって自責的になりストレスが高まると不安症状もひどくなり、そんな自分をますます責める、という悪循環があります。
・社交不安障害の人は、自分はできそこないで人から好かれないだろうと思っているので、自分の悩みなどをなかなか人に打ち明けません。
・悪循環のひとつの特徴は、自分自身がコントロールを失っているというところにあります。
・ですから、不安障害の治療の大きな目標が、「コントロールを取り戻す」ということになります。コントロールを取り戻すだけで、不安は大きく軽減します。結果はすぐに改善しなくても、このまま取り組んでいけばよくなるのだ、という感覚が持てることは明らかに安心につながるからです。
・社交不安障害になると、繰り返しによって不安が減じるということはあまりありません。むしろ、繰り返しによってますます不安に焦点が当たっていくようなこともあります。
・不安反応としての身体症状が他人に気づかれるのではないか。その結果として相手からネガティブな評価を受けるのではないか」という不安に焦点が当たることになります。
一般に、不安反応を気にすればするほど、不安が強まり、不安反応そのものもひどくなる、という悪循環が成立します。
・社交不安障害も同じことであり、対人状況を「危険」と感じるセンサーを調整することが適切な対応になります。
・子どもの社交不安障害の場合には、自分の恐怖が不合理なものだということを必ずしも認識しているわけではありません。
社交不安障害の人の対人関係の本質には、「ネガティブな評価へ恐怖」という特徴があります。
・人とのかかわりを避け、かかわるとしても表面的な「いい人」にとどまって本質的な自己開示をしないため、親しい関係を作ることは事実上不可能になります。
・本来は安全確保のためにとったはずの戦略が、結果としては自分の安全を 脅かすことになっているのです。
・ネガティブな評価は、有害な側面のほうがずっと大きいでしょうから、受け入れなくても全くかまわないのです。また、ネガティブな評価をされたときに、「自分がその程度の人間だから」と、「自分の問題」としてとらえるのではなく、そんな言動しかとれない「相手の問題」としてとらえられるようになると、自分自身についての感じ方がだいぶ変わってきます。
・不安という感情そのものに対処することはできなくても、その不安を生み出している考え(認知)は客観的に見つめることが可能です。

次は後半6~12章の対人関係療法による社交不安障害の治療について。

社交不安障害の治療の目標は、コントロールを取り戻して自分の力を感じられるようになることです。
・治療の目標は、不安を「コントロール可能なもの」にしていくことです。それは「不安を感じなくなること」ではなく、「不安を正当な感情として理解し、活用できるようになること」であると言えます。
・治療を通して調整していくべきものは、センサーのほうです。
・ネガティブな評価を恐れる→実際に人とやりとりしてみたら、ある程度の成果をえられた→少々自信がつき、次のやりとりをしてみる気になる」というサイクルへと軌道修正していくことができます。
・対人関係療法で言う「治療による役割の変化」というのは、簡単に言えば、「すべては性格の問題」と思っていたところから「病気にかかっていたのだ」という認識に変化する、ということです。
・社交不安障害の人と何かについて話そうとしても、「もうそのことはどうでもいいんです」「気にしていませんから」と拒まれることが少なくありません。なぜそういうふうになるのかというと、自分の本音を打ち明けると、ネガティブな評価を受けたときの傷がそれだけ大きくなることが恐いからです。
・自分の感じ方が不適切だと思ったときには、「それが別の人の気持ちだったら」ということを考えてみると役に立ちます。
・身体症状が出てしまうと、「自分の不安が露見してしまうのではないか」という恐怖が、実際に現実のものになりうるからです。
症状は、症状として受け入れるときに、もっとも力を失うのです。
・本書では、社交不安障害の治療において出番の多い「役割の変化」と「対人関係上の役割をめぐる不一致」についてご説明します。
・「役割不安」という第五の問題を提案しています。これは、本来は能力のある領域なのにリラックスできないというような特徴を意味し、(1)社会的孤立 (2)傷つきやすい自尊心 (3)受動性/自己主張のなさ (4)怒りを表現することができない (5)対立の回避 (6)リスクの回避 (7)社交やパフォーマンスのポジティブな側面を楽しむことができない、という要素が含まれる概念です。ほとんどの社交不安障害の患者さんが「役割不安」に該当する問題を持っており、対人関係の新しいパターンをひとつひとつ達成するなかでこの不安に取り組んでいくことになります。
・対人関係療法で「役割の変化」を扱っていく際には、主に、気持ちと対人関係に注目していきます。起こっている気持ちをよく知って、安全な環境で表現して位置づけていくことと、自分を支えてくれる人間関係を再確立して安心感を作っていくことで、「霧」は晴れていきます。すると、自分は「遭難」しているわけではなく単に「移動」しているにすぎないということがわかってきます。
社交不安障害の人にとって、こうした「当然の感情」を認識するのはあんがい難しいことです。シラネさんも、「自分は使えない研修担当者だ」というところばかりに目が向いており、実際に自分が何かを失ったということに意識が向いていませんでした。
・逆に、援助者の立場にある人は、DVという人権侵害を前にすると、前項の「喪失」という側面を軽視しがちになりますので注意が必要です。
・もちろん「慣れ親しんだ小さな町で暮らす役割」から「人間関係も把握できない、不慣れで大きな都市で暮らす役割」という大きな変化があるのですが、そこには家族や幼なじみとの別れも重要な要素としてかかわってきます。
・なぜかというと、「気にしないようにしよう」というところに力点が置かれているために、現在の感情を肯定するという重要なテーマが抜け落ちてしまっているからです。
感情を受け入れるという作業は、他人にも共有してもらうことで容易になります。それは、「他人に話しても大丈夫なくらい、ふつうの感情なのだ」ということが身体で理解できるからです。
・誰かとの不一致のなかで症状が強まるようなときや、病気を治そうとしていくと誰かとの関係が問題になってくるようなときには、「対人関係上の役割をめぐる不一致」を治療焦点として選ぶことがあります。
・問題は自分にあるのではなく相手にあるのだという認識は、社交不安障害においては治療的です。
・社交不安障害の人の多くが、基本的には「どうすべきか」ということを知っています。ただ不安が強すぎてその知識を生かせないだけなのです。」
・そもそも何らかのリスクを 冒そうとするときには、「失敗しても大丈夫」というメッセージを親しい人が送ってくれることが何よりの力になります。
・この考え方は、「親密さへの不安」を持っている人にも役立ちます。少しでも親しさを見せると相手が急速に距離を縮めるかもしれず、自分が振り回されることが恐いので一切親しくならないようにしている、という人はあんがいいます。
・自らの社交不安を隠すために、あえて理屈っぽいコミュニケーションをする人もいます。もちろんそういうやり方では人との親しさを深めることはできませんので、自信をつける機会もなく、社交不安が改善する機会もえられません。
・相手のメッセージを理解したと思いこむというパターンは社交不安障害の人に多く見られます。
・社交不安障害を対人関係と結びつけることは、一時的に不安を強めることが少なくありません。患者さんはそれまでは不安を強める状況を回避してきたために、「小康状態」にあることが多いからです。
・新たな行動パターンを試すときの不安は、決して現実をそのまま反映したものではなく、不安でも前進していくことによって、最終的には必ずプラスになるものです。
・「いい人」を続けることにも同じような効果があります。「いい人」でいないと自分は好かれない、という感覚を増すのです。実際には「いい人」でないパターンを試したことがあるわけではないので「いい人でいないと自分は好かれない」という証拠はないのです。
・怒ると取り乱してしまい、全身がワナワナしてしまったり涙ぐんだりしてしまう、というタイプの人も、自分が怒るということについて強い苦手意識を持っています。ひとつ言えることは、そのようなタイプの人は、ふだんから基本的に怒りを抑制しているということです。抑制しているのに怒りを感じてしまうので、動揺してしまうのです。
対立を前向きに扱っていくために参考になるのは、「私」を主語にして話すことです。誠意を持って、自分の気持ち、自分のニーズを話している限り、対立が破滅的な結果につながることはまずありません。
・一般に、仕事における役割は定義がはっきりしているため、「得体の知れない不安」が少ないのです。そこで話すべきことも基本的には決まっていますし、仕事上の社交辞令にしても、「相手をリラックスさせる」など目的が決まっていますので、取り組みやすいのです。
感情的に怒っている人でパニックになっていない人はいない、と断言してもかまわないくらい、この原則は一般にあてはまりますので、活用してみてください。相手がパニックになっているのだな、と思うと、「自分の問題」ではなく「相手の問題」として見ることができ、社交不安もぐっと和らぎます。
・私がよく患者さんに申し上げるのは、「治療が終わってから新しいことをやってみて、失敗したと思っても、もうそれをここで話し合うことができなくなります。これから起こりそうな恐いことは、何でも治療の間にやってみてください。治療を受けている間であれば、たいていのことは何とか対応できるものです」ということです。この言葉によって動いてくれた人は少なくありません。
・社交不安障害の方のなかには、不安を感じずにすむ人との関係のなかで、抑えている感情が爆発し、攻撃的になったりするケースがときどきあります。過保護な家族などに対しては、息苦しさを感じると、ぶっきらぼうな言葉で排除しようしたりすることもあります。
・「爆発」というところを強調してしまうと、自分を恥ずかしく思う気持ちが刺激され、そんな自分を隠さなければ、とますます社交不安障害が悪化します。「抑えていたら伝わらない」という、治療の本筋を進めていくことで、抑えることとセットで出てくる爆発のほうは収まってくるものです。ご家族からすると、やはり「爆発」のほうが目につきますのでそちらから介入したくなるものですが、それは逆効果になることが多いということを覚えておいていただきたいと思います。
・人間としての相手を見て、相手が実際に感じていることを知り、受け入れていく、というプロセスが、成功する治療のなかでは必ず起こります。そして、その結果として、社交不安障害をこじらせている、自分に対する評価も手放すことができるのです。

長くなってしまいましたが、いかがだったでしょうか。
個人的には、ここまで丁寧に社交不安障害では何が自分に起こっているのかを説明してくれている本は貴重だと思っています。また、精神疾患の説明で終始せずに、それを対人関係療法で治療するというやり方についても、ここでは省きましたが事例やエピソードを挟みながら具体的に書かれています。

また、私のように医療機関以外で働いている心理士にとっても、特に前半部分は来談者の理解につながると思います。

当事者やご家族、支援者(特に公認心理師、臨床心理士の初学者)にお勧めしたい一冊です。
ちなみに、Kindle版なら紙書籍の50%OFFで買えるので、そちらもお勧めです。

最後までご覧いただきありがとうございました!

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